ブリーダーズC、ゴドルフィン有力馬に注目

 11月6日と7日の両日にわたってサンタアニタ競馬場で開催される第26回ブリーダーズCへ向けた前哨戦がほぼ終了したが、今季後半に入って絶好調モードに突入したゴドルフィンから複数の有力馬が出走予定で、全14競走中のうち何競走をブルーの勝負服が持っていくのか、大きな関心を集めている。

 まず初日の6日(金曜日)、開幕戦となるオールウェザー14fの「BCマラソン」に送り込むのが、マスターリー(牡3歳、父スラマニ)だ。ご存じの如く、9月12日にドンカスターで行われた3歳3冠最終戦のG1英セントレジャーを制した、ダーレー生産馬である。春後半のG1パリ大賞で好勝負したカヴァルリーマンが、秋の凱旋門賞で3着に健闘したのを見ても、本馬の実力は折り紙付き。同じ欧州勢で昨年のG1愛セントレジャーを制しているセプティマス、このレース連覇を目指すムハナクらが相手となりそうだが、順当なら「ここでまず1勝」を計算出来るはずだ。

 サラルイーズ(牝3歳、父マリブムーン)とセヴェンスストリート(牝4歳、父ストリートクライ)という有力2頭での挑戦になるのが、牝馬によるオールウェザー7fのG1「BCフィリー&メア・スプリント」だ。8月29日にサラトガで行われたG3ヴィクトリーライドSを制して今季初重賞制覇を果たした後、9月26日にベルモントパークで行われたG2ギャラントブルームHでG1・5勝馬インディアンブレッシングの2着となったサラルイーズは、上昇気流に乗っての大一番参戦となる。一方のセヴェンスストリートも、8月2日にサラトガで行われたG1ゴーフォーワンドSを制して2度目のG1制覇を果たした強豪だ。昨年のこのレースの勝ち馬ヴェンチュラや、今季この路線のG1・2勝のインフォームドデシジョンなど、ここは相手も揃っているが、どこまでの戦いが出来るか。

 初日のメインレースとして行われる牝馬によるオールウェザー9fのG1「レディース・クラシック」も、ゴドルフィンは2頭出しになる模様だ。1頭は、10月3日にベルモントパークで行われたG1ベルデイムSを制して、自身5度目のG1制覇を果たしたミュージックノート(牝4歳、父エーピーインディ)。昨年のこのレースで3着となって、オールウェザーへの適性も示しており、当然のことながら昨年以上の成績を目指している。もう1頭が、昨年のこのレース2着馬ココアビーチ(牝5歳、父ドネレイルコート)。今季は6月のベルモントパークの特別が初戦と、ゆっくり始動。10月10日にサンタアニタで行われたG1レディーズシークレットSで3着となって、本番前の試走を終えている。この路線には、そのレディーズシークレットSを制してデビューからの連勝を13に伸ばしたゼニヤッタという怪物がいるが、ゼニヤッタにはBCクラシック参戦の噂も流れており、ゼニヤッタ不在となればゴドルフィン勢の1・2フィニッシュも充分あるうる状況だ。

 続いて2日目の7日(土曜日)。デイリーレーシングフォームの10月14日付けオッズで、上位人気5頭のうち4頭がゴドルフィンという、びっくりするぐらいの寡占状態になっているのが、今年からG1の格付けを得たオールウェザー8fのG1「BCダートマイル」だ。中でも1番人気に推されているのが、今年春のG2UAEダービー勝ち馬で、9月19日にルイジアナダウンズで行われたG2スーパーダービーを勝って見事復活を果たしたリーガルランサム(牡3歳、父ディストーテッドヒューモア)である。この他、9月18日にベルモントパークで行われた一般戦を制し、これも見事なカムバックを果たした昨年の全米2歳王者ミッドシップマン(牡3歳、父アンブライドルズソング)、10月11日にベルモントパークで行われたG2ジェロームHを制して今季の成績を3戦3勝としたジローラモ(牡3歳、父エーピーインディ)、9月5日にサラトガで行われたG1フォアゴーSを制したパイロ(牡4歳、プルピット)と揃ったここは、まず間違いなくブルーの勝負服が先頭でゴールを切ることになろう。

 2日目の第5レースに組まれたG1「マイル」も、ゴドルフィンは2頭出しの予定。1頭は、モハメド殿下お気に入りの1頭と言われる、グラディアトーラス(牡4歳、父シリック)。3月のG1ドバイデューティフリーを圧勝し、この時点で世界最高値のレーティングを得ながら、欧州に戻った後の3戦でいずれも大敗。ドバイでのパフォーマンスをフロック視する声も上がっていたが、10月11日にイタリアのサンシロで行われたG1ヴィトリオディカプア賞を4馬身半差で快勝し、その実力を再証明した馬である。もう1頭は、英2000ギニー2着、セントジェームスパレスS2着など、今季の欧州3歳マイル路線で安定した成績を残したデリゲイター(牡3歳、父ダンシリ)だ。 昨年に続く連覇を狙うゴールディコーヴァが、壮行レースとなったG1ラフォレ賞で思わぬ敗戦を喫しただけに、ゴドルフィン勢にもおおいにチャンスのある1戦である。

 2日目の第6レースに組まれたオールウェザー6fのG1「BCスプリント」に出走するのが、10月11日に本番と同じコース・同じ距離で行われたG1アンシェントタイトルSを快勝したガイエゴー(牡4歳、父ギルディッドタイム)だ。今季ここまで4戦3勝、2着1回と極めて安定した成績を残している実力馬が、まさに盤石の態勢を整えて頂上決戦を迎える。9月6日にデルマーで行われたパットオブライエンSを含めて、今季この路線のG1・3勝というゼンセーショナルが相手となるが、戦ってきた相手はガイエゴーの方が強く、ここも充分に勝機のある戦いとなるはずだ。

 英国のブックメーカーが、「ゴドルフィンが○勝する」という賭けを発売するほど、手駒の揃ったゴドルフィン。その攻勢ぶりにご注目いただきたい。

(合田直弘)